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一人親方の労災特別加入とは?対象・手続き・給付基礎日額の決め方を解説

一人親方の労災特別加入とは

一人親方の労災特別加入とは、労働者を雇わずに建設工事を請け負う個人事業主が、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて、労働者災害補償保険(労災保険)に任意で加入できる制度のことです。労災保険はもともと労働者を保護するための制度であり、事業主である一人親方は本来その対象に含まれません。しかし建設業は災害の危険が高く、働き方の実態が労働者に近いことから、労働者災害補償保険法第33条以下で特別加入の道が設けられています。下請に一人親方が入る現場を持つ元請にとっては、加入の有無と加入内容が、現場管理上の確認事項になります。

なぜ重要なのか

建設事業の労災保険は、建設工事全体を一つの事業として取り扱います。国土交通省のリーフレット「みんなで目指す クリーンな雇用・クリーンな請負の建設業界」では、元請事業主が下請負人に請け負わせた部分も含めて労災保険の成立手続きを行う必要があり、これを行わなかった場合には追徴金や、保険給付に要した費用の徴収が行われる可能性があると示されています。さらに同リーフレットは、一人親方との契約が雇用契約ではなくても、働き方が労働者と同様と判断された場合には、その方は労働者として取り扱われ、元請事業場の労災保険の適用を受けることになると整理しています。つまり「一人親方だから自己責任」という前提で現場を回すことは、元請側にリスクを残したままの状態になりかねません。被災時の報告義務については個人事業者等死傷病報告とは?一人親方の被災を誰が報告するのかもあわせてご確認ください。

対象となる範囲・条件

特別加入の対象は、労働者災害補償保険法施行規則第46条の17第2号に定める「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業」を、労働者を使用しないで行うことを常態とする一人親方等です。大工、左官、とび職人などが典型例として挙げられています。なお労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときは、一人親方等として特別加入することができるとされています。

保険給付の対象となる業務災害の範囲も限定されています。建設業の一人親方等については、(1)請負契約に直接必要な行為を行う場合、(2)請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合、(3)請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合、(4)請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く)およびこれに直接附帯する行為を行う場合、(5)台風・火災などの突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合、の5つが示されています。通勤災害については、建設業の一人親方等は一般の労働者と同様に取り扱われます(個人タクシー業者や漁船による自営漁業者は通勤災害の保護の対象外とされています)。個別の事案が該当するかどうかの認定は、所轄の労働基準監督署の判断によります。

手続き・実務の流れ

すでに都道府県労働局長の承認を受けている特別加入団体がある場合は、その団体に加入を申し込むのが一般的です。加入手続きは団体が行い、団体は「特別加入に関する変更届」を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長へ提出します。新たに特別加入団体をつくって申請する場合は「特別加入申請書(一人親方等)」を同じ経路で提出し、団体の定款など組織・運営を明らかにする書類と、業務災害の防止に関して団体が講ずべき措置および一人親方等が守るべき事項を定めた書類を添付します。申請に対する労働局長の承認は、申請の日の翌日から30日以内で申請者が加入を希望する日となります。近くの特別加入団体は、都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせることができます。

過去に一定の業務に従事していた場合は、申請の際に加入時健康診断を受ける必要があります。

特別加入前に従事した業務通算期間必要な健康診断
粉じん作業を行う業務3年以上じん肺健康診断
振動工具使用の業務1年以上振動障害健康診断
鉛業務6か月以上鉛中毒健康診断
有機溶剤業務6か月以上有機溶剤中毒健康診断

保険料は「給付基礎日額×365日×保険料率」で算定します。給付基礎日額は3,500円から25,000円までの16区分から選び、申請に基づいて労働局長が決定します。建設の事業の第2種特別加入保険料率は、令和6年4月1日改定で1,000分の17(改定前は1,000分の18)です。たとえば給付基礎日額を10,000円とした場合、保険料算定基礎額は3,650,000円、年間保険料は62,050円となります。給付基礎日額が低ければ保険料は安くなりますが、その分、休業(補償)等給付などの給付額も少なくなります。

よくある誤解

「現場に入る職人は誰でも一人親方として特別加入できる」と思われがちですが、実際は、発注元との契約の形式が請負であっても、実態として労働者と同様の働き方をするときには一人親方として扱われません。国土交通省は、諾否の自由・指揮監督・拘束性・代替性・報酬の労務対償性・資機材等の負担・報酬の額・専属性という8項目からなる「働き方の自己診断チェックリスト」を公表し、労働者側に多く当てはまる場合は雇用契約の締結を検討するよう促しています。

「事故が起きてから給付基礎日額を上げればよい」と考えられることもありますが、実際は、給付基礎日額の変更申請は事前(3月2日から3月31日)または労働保険の年度更新期間中に行うもので、災害発生前の申請が前提とされています。また、業務災害または通勤災害が発生した後に変更届を提出しても、すでに発生した災害の給付には反映されません。

「加入証明書があれば現場で起きたことはすべて対象になる」と受け取られることもありますが、実際は前述のとおり業務災害の範囲は5類型に限定されており、請負工事と結びつかない行為は含まれないと整理されています。作業員名簿など安全書類の整備状況はグリーンファイル(安全書類)とは?種類・作成者・提出先もご参照ください。

経営者が確認したい3つのポイント

□ 作業員名簿で「一人親方」の人を洗い出せているか
社会保険欄が「雇用保険=適用除外/医療保険=国民健康保険/年金=国民年金」となっている方を、安全担当者が名簿ベースで抽出し、社員か一人親方かを下請企業に確認する運用にします。

□ 特別加入の内容まで確認しているか
加入証明書で、特別加入団体名・有効期間に加えて給付基礎日額を確認します。所得水準に見合わない低い日額のままになっていないか、元請として着工前に把握しておきます。

□ 請負契約書と報酬の決め方が実態と合っているか
再下請負通知書と請負契約書を提出してもらい、報酬が日給・時間給ではなく工事の出来高見合いで決まっているか、社長または工事部長が確認します。

よくある質問

Q. 一人親方が人を雇ったら、特別加入は続けられませんか

A. 労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときは、引き続き一人親方等として特別加入することができるとされています。100日以上になる場合は、中小事業主等としての特別加入など別の枠組みの検討が必要です。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にご相談ください。

Q. 給付基礎日額はいくらにすればよいですか

A. 3,500円から25,000円までの区分から選びますが、金額の正解はありません。日額が低いと保険料は安くなる一方、休業(補償)等給付などの給付額も少なくなります。国土交通省も、所得水準に見合った適正な給付基礎日額で申請するよう呼びかけています。

Q. 現場への行き帰りのけがは対象になりますか

A. 建設業の一人親方等については、通勤災害は一般の労働者と同様に取り扱われます。ただし合理的な経路や方法を逸脱・中断した場合は通勤に該当しないなどの整理があり、個別の認定は所轄の労働基準監督署の判断によります。

Q. 元請として、一人親方の特別加入を確認する義務はありますか

A. 特別加入は任意加入の制度であり、元請に確認を義務づける規定が置かれているわけではありません。ただし建設事業の労災保険は工事全体を一の事業として扱うため、元請として契約内容と働き方の実態を確認しておくことが実務上重要とされています。

まとめ

一人親方の労災特別加入は、特別加入団体を通じて任意で行う制度です。対象となる業務災害の範囲は5類型に限定され、給付基礎日額は災害が起きる前に決めておく必要があります。そして働き方の実態が労働者と同様であれば、そもそも一人親方として扱われません。自社の現場に入る一人親方について、加入状況と契約の実態を確認してみてはいかがでしょうか。

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出典

本記事は建設業に関わる一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険会社または保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。制度・法令の内容は掲載時点のものです。実際の適用は個別の事情により異なりますので、詳細は所管官庁または専門家にご確認ください。当社の勧誘方針はこちらをご覧ください。

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