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個人事業者等死傷病報告とは?一人親方の被災を誰が報告するのか

はじめに

現時点で公表されている情報では、労働安全衛生規則が改正され、2027年(令和9年)1月1日から「個人事業者等死傷病報告」という新しい制度が始まります。労働者と同じ場所で働く一人親方が業務中にけがをした場合、その事実を労働基準監督署へ報告する義務が、被災した本人ではなく仕事を出した側に生じる仕組みです。この記事を読むと、報告の対象・報告する人・報告の方法が整理できます。

何が起きたのか

厚生労働省の公表資料によると、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が第217回国会で成立し、令和7年5月14日に公布されました。労働者と同じ場所で働く個人事業者等を労働安全衛生法による保護の対象および義務の主体として位置づける内容で、令和8年1月1日から令和9年4月1日にかけて5段階で施行されます。このうち死傷病報告に関する部分は、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和7年厚生労働省令第120号。令和7年12月9日公布)により令和9年1月1日施行と定められ、令和8年6月24日付け基発0624第5号で運用上の考え方が示されました。厚生労働省は令和7年12月から令和8年2月にかけて、全国13都市で説明会を開催しています。

【用語解説】個人事業者等死傷病報告とは

個人事業者等死傷病報告とは、労働者と同じ場所で作業する個人事業者が、業務に起因する負傷や疾病により死亡し、または4日以上休業したときに、所轄の労働基準監督署長へ提出する報告のことです。

特定注文者とは、個人事業者に仕事を請け負わせた注文者のうち、その個人事業者と同じ場所で自らもその仕事を行っている者のことです。数次の請負契約により該当者が複数いる場合は、最も後次の請負契約における注文者を指します。

災害発生場所管理事業者等とは、特定注文者がいない場合に、作業を行う場所を管理し、かつ自社の労働者などがその場所で作業している事業者のことです。

関連する法令・制度

根拠となるのは、改正後の労働安全衛生規則第98条の2から第98条の6です。第98条の2は、特定注文者または災害発生場所管理事業者等に対し、災害の発生を把握したときは遅滞なく、電子情報処理組織を使用して所轄労働基準監督署長へ報告することを義務づけています。第98条の3および第98条の4は、被災した個人事業者の側にも報告主体への報告を求めるとともに、報告を理由とする取引停止などの不利益な取扱いを禁止しています。第98条の6は、労災保険法施行規則第46条の16に定める数以下の労働者を使用する中小規模事業者について、代表者や役員自身が被災した場合の報告を定めています。通達では、これらの報告義務に罰則は伴わないこと、報告主体に該当することをもって災害防止上の責任を負うものではないことも明記されています。報告方法は、厚生労働省が整備する報告支援システムを使う電子申請が原則です。

中小建設会社への影響

影響は大きく2点あります。1点目は、一人親方に仕事を出している会社が「報告する側」になり得ることです。自社も同じ場所で施工していれば特定注文者に該当し、報告義務の名宛人になります。2点目は、社内で災害情報を把握する仕組みが要る点です。通達では、被災者本人からの連絡がなくても、災害を現認した場合や救急搬送の事実を把握した場合には報告義務が生じるとされています。誰がどの経路で情報を受け、誰が監督署へ報告するのかを決めていないと、把握漏れが起こりかねません。入場管理や安全書類の運用と切り離せない話でもあるため、グリーンファイル(安全書類)の整備状況とあわせて点検すると進めやすくなります。建設業に固有のリスク整理の考え方は建設業の方へでも紹介しています。

経営者が確認したい3つのポイント

自社が「特定注文者」に当たる現場を洗い出す
一人親方と請負契約を結んでいる現場のうち、自社も同じ場所で施工している現場がどれかを、請負契約書と施工体制台帳で確認します。工事部門の責任者が現場ごとに一覧化すると、漏れが出にくくなります。

一人親方の被災情報が上がる経路を決める
けが人が出たとき、誰が最初に把握し、誰に伝え、誰が監督署へ報告するのかを、朝礼や新規入場者教育の場で共有します。休業4日以上に当たるかは後日判明することも多いため、軽傷でも記録を残す運用にします。

電子申請の担当者を決めておく
電子情報処理組織を使う報告が原則のため、社内でアカウント管理者と入力担当を決めておきます。記載事項や提出先は、所轄の労働基準監督署に事前に確認しておくと安心です。

よくある質問

Q. 一人親方のけがを報告すると、自社の責任を認めたことになりますか

A. 令和8年6月24日付けの通達では、報告主体に該当することをもって災害防止上の責任を負うものではなく、両者に直接の関係はないとされています。あくまで災害の発生状況を把握するための制度です。ただし、これとは別に安衛法上の措置義務や民事上の責任が問われる場面はあり得ます。

Q. 報告してきた一人親方との契約を見直しても問題ありませんか

A. 報告を理由とする契約の解除・更新拒否・条件の不利益変更などは、安衛則で禁止される「不利益な取扱い」に当たるとされています。報告と無関係な客観的理由に基づく見直しは該当しませんが、時期や経緯から個別に判断されるため、判断の根拠を記録に残しておくことが大切です。

Q. 労災保険の特別加入をしていれば、この報告は不要になりますか

A. 特別加入は労災保険の給付に関する制度で、今回の報告制度とは目的も根拠条文も異なります。特別加入の有無にかかわらず、要件に当てはまれば報告の対象になります。なお補償には免責事由や制限条件が定められており、範囲は制度・契約ごとに異なります。詳細は加入先や各保険会社の重要事項説明書・約款をご確認ください。

まとめ

施行は2027年1月1日で、まだ時間はあります。ただ、対象現場の洗い出しと連絡経路の整理は、今の施工体制が動いているうちに手をつけたほうが進めやすい作業です。一人親方に仕事を出している現場が自社にどれだけあるか、確認してみてはいかがでしょうか。

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出典

本記事は建設業に関わる一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険会社または保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。制度・法令の内容は掲載時点のものです。当社の勧誘方針はこちらをご覧ください。

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