はじめに
愛知県は2026年10月16日施行で「建設業者の不正行為等に対する監督処分要領」を改正し、県のウェブサイトで公表しました。国土交通省も2026年10月1日施行で「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」を改めており、都道府県の運用がこれに沿う形です。この記事では、どの違反がどれだけの営業停止につながるのか、公表されている基準の日数を整理し、中小建設会社が自社で確認しておきたい点をまとめます。
何が起きたのか
現時点で公表されている情報では、愛知県都市総務課(建設業・不動産業室)のページに、2026年10月16日施行の監督処分要領が掲載されています。この要領は、愛知県知事許可業者に対して県が行う指示処分・営業停止処分の運用を定めたもので、不正行為の類型ごとに営業停止期間の下限を示しています。原則として施行後に行われた不正行為等に適用され、施行前の行為は従前の例によるとされています。国の基準も2026年10月1日施行(国不建第95号)で改められました。なお、その前の改正(2025年12月12日施行)では、健康保険等の未加入を理由とする指示処分の規定が削除され、刑の名称が「懲役刑」から「拘禁刑」に改められています。
【用語解説】監督処分とは
監督処分とは、建設業法に違反した建設業者に対して許可行政庁が行う行政上の処分のことです。建設業法第28条に基づく指示処分と営業停止処分、第29条に基づく許可の取消しがあります。指示処分とは、違反の状態を是正するよう具体的な措置を命じる処分のことです。指示に従わない場合は営業停止に移行すると整理されています。営業停止処分とは、定められた期間、新たな請負契約の締結などを禁じる処分のことです。許可そのものが消えるわけではありませんが、受注活動は止まります。
関連する法令・制度
公表されている基準では、営業停止期間の下限が類型ごとに示されています。一括下請負(建設業法第22条違反)は15日以上。主任技術者等の不設置は15日以上で、虚偽の実務経験により資格を得た者を配置した場合は30日以上。経営事項審査の虚偽申請は30日以上とされ、監査を受けた項目に虚偽があれば45日以上。施工体制台帳等の不作成・虚偽記載は7日以上。無許可業者との下請契約は7日以上。粗雑工事による重大な瑕疵は15日以上(低入札価格調査の対象工事では30日以上)。労働安全衛生法違反による特に重大な事故は3日以上、公衆に重大な危害を及ぼしたと認められる場合は7日以上。談合・贈賄等で代表権のある役員が刑に処せられた場合は1年とされています。
中小建設会社への影響
影響は3点に整理できます。第一に、営業停止の期間中は、新たな請負契約の締結、追加工事を伴う契約変更、これらに関わる入札・見積り・交渉ができないとされています。一方で、既に締結した契約の施工、瑕疵の修繕、災害時の緊急を要する工事、代金の請求・受領、許可や経営事項審査の申請は行えるものとされています。止まるのは工事そのものより受注で、空白期間が数か月後の売上に効いてきます。第二に、処分内容は速やかに公表すると定められており、元請や発注者の与信・指名に影響します。第三に、書類の不備がそのまま処分類型に含まれている点です。施工体制台帳・施工体系図の不作成は7日以上の営業停止の対象とされており、日常の書類管理が処分リスクに直結します。
経営者が確認したい3つのポイント
□ 施工体制台帳・施工体系図が、作成義務の生じる工事で漏れなく整っているか
工務担当が現場備付けの控えを、経理担当が下請契約金額の合計を、それぞれ確認します。作成義務の基準に達しているのに未作成の現場がないかを、契約書と注文書から洗い出してください。
□ 配置技術者の資格と専任状況が、実際の現場と書類で一致しているか
監理技術者資格者証や施工管理技士の合格証明書の原本と、現場ごとの配置表を突き合わせます。実務経験で資格を取得した社員については、経験を裏づける工事記録が社内に残っているかも確認します。
□ 経営事項審査の申請内容に、完成工事高や技術職員の計上で誤りがないか
申請書の控え・工事経歴書・技術職員名簿を、決算書と社会保険の加入記録に照らして経営者自身が確認します。経審の訂正手続きは許可行政庁に確認してください。
よくある質問
Q. 営業停止になると、施工中の現場も止めなければならないのですか
A. 公表されている基準では、営業停止の期間中であっても、既に締結した請負契約の施工は行えるものとされています。禁じられるのは新たな請負契約の締結や、追加工事を伴う契約変更などです。個別の取扱いは許可行政庁にご確認ください。
Q. 下請業者が起こした違反で、元請が処分を受けることはありますか
A. 監督処分は、違反行為を行った建設業者に対して行われるのが原則と整理されています。ただし、施工体制台帳の作成や無許可業者との契約の禁止など、元請自身に課された義務の違反であれば、元請が処分の対象となり得ます。
Q. 過去の違反は、いつまでさかのぼって処分されますか
A. 愛知県の要領では、処分のための調査は原則として不正行為等があったときから3年以内に行うものとされています。ただし、他の法令違反で公訴が提起されたものなど、例外も定められています。
まとめ
営業停止の日数は、書類の不備であっても7日以上から始まります。改正建設業法への対応と合わせて、施工体制台帳・配置技術者・経営事項審査の3点が自社ではどうか、確認してみてはいかがでしょうか。
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出典
- 愛知県 都市・交通局 都市総務課「建設業者の不正行為等に対する監督処分要領(令和8年10月16日施行)」(2026年10月16日掲載)
- 国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準について」(令和8年10月1日施行・国不建第95号)
- e-Gov法令検索「建設業法(昭和24年法律第100号)」第22条・第28条・第29条
本記事は建設業に関わる一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険会社または保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。制度・法令の内容は掲載時点のものです。実際の適用は個別の事情により異なりますので、詳細は所管官庁または専門家にご確認ください。当社の勧誘方針はこちらをご覧ください。
