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石綿(アスベスト)事前調査制度とは?建築物と工作物の違い・報告基準を解説

石綿(アスベスト)事前調査制度とは

石綿(アスベスト)事前調査制度とは、建築物や工作物の解体・改修工事を始める前に、工事の対象部分に石綿含有建材が使われているかどうかを、設計図書などの書面と現地での目視により調べ、その結果を記録・掲示し、一定規模以上の工事では行政へ報告することを義務づけた制度のことです。根拠は労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則(石綿則)第3条と、大気汚染防止法です。規模の大小や石綿の有無にかかわらず、解体・改修工事であれば原則として調査が必要とされている点が、この制度の大きな特徴です。

なぜ重要なのか

石綿は、吸い込むと長い潜伏期間を経て健康被害を生じるおそれがあるとされ、作業員だけでなく近隣住民への飛散も問題になります。事前調査を怠ったまま工事を進めると、労働基準監督署や自治体からの指導・命令の対象となるほか、作業員の健康被害が後年になって判明した場合には、事業者の責任が問われる可能性もあります。とくに元請は、下請の作業員を含めた現場全体の安全に目を配る立場にあり、安全配慮義務の観点からも、事前調査は「書類上の手続き」以上の意味を持ちます。また、解体工事の届出や現場パトロールの場面では、石綿の調査結果の掲示や報告の有無も確認されることがあり、受注者としての信用にも関わります。

対象となる範囲・条件

事前調査そのものは、建築物・工作物の解体・改修工事のすべてが対象です。そのうえで、次の3点を区別して押さえておくと、自社の該当状況を判断しやすくなります。

①調査結果の報告が必要な工事(令和4年4月1日以降に着手する工事)
・解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事
・請負代金の合計が税込100万円以上の建築物の改修工事
・請負代金の合計が税込100万円以上の特定工作物の解体・改修工事
請負代金には材料費や消費税を含み、事前調査の費用は含まないと整理されています。報告は石綿の有無にかかわらず必要で、根拠は石綿則第4条の2および大気汚染防止法第18条の15第6項です。

②有資格者による調査が必要な工事
・建築物:令和5年10月1日以降に着工する工事から、建築物石綿含有建材調査者(一般・特定・一戸建て等)による調査が必要
・工作物:令和8年(2026年)1月1日以降に着工する工事から、特定工作物などについて工作物石綿事前調査者による調査が必要
判定基準は「契約日」ではなく「着工日」です。

③建築物と工作物の違い
「特定工作物」には、反応槽、加熱炉、ボイラー、圧力容器、配管設備、焼却設備、煙突、貯蔵設備、発電設備(太陽光・風力を除く)、変電・配電・送電設備(ケーブルを含む)、トンネルの天井板、プラットホームの上家、遮音壁などが挙げられています。名古屋市のFAQ等では、キュービクル(変電設備)も特定工作物に該当するとされています。

手続き・実務の流れ

一般的な流れは次のとおりです。担当窓口は、報告については工事場所を所管する自治体(名古屋市内であれば名古屋市)と労働基準監督署です。

順序実施すること主な担い手
1設計図書等による書面調査元請(有資格者)
2現地での目視調査。不明な場合は分析調査、または石綿ありとみなして対策元請(有資格者)
3工事開始日までに、調査結果を書面で発注者へ説明元請
4対象工事は石綿事前調査結果報告システム(gBizID)で着工前までに報告元請または自主施工者
5調査結果を現場に掲示し、記録の写しを備え置く元請
6調査記録を3年間保存元請

電子申請ができない場合は、自治体の環境部局と労働基準監督署の両方に紙の報告書を提出する方法も用意されています。複数工事を一括申請するにはgBizIDプライムが必要とされているため、取得していない場合は早めに準備しておくと安心です。

よくある誤解

誤解1:「小さな工事なら調査は不要」
報告の要否には80㎡・100万円という基準がありますが、事前調査そのものは規模にかかわらず必要と整理されています。「報告不要=調査不要」ではありません。

誤解2:「建築物の調査者資格があれば設備も調べられる」
建物内のボイラーや受変電設備などが特定工作物に該当する場合、令和8年1月1日以降の着工分は工作物石綿事前調査者の資格が必要とされています。設備更新工事を請け負う専門工事業者は特に確認が必要です。

誤解3:「新しい建物だから石綿はない」
平成18年9月1日以降に着工した建築物であることが設計図書等で確認できれば目視を省略できる場合がありますが、その確認自体が書面調査として必要です。「新しそうに見える」という印象では判断できません。

経営者が確認したい3つのポイント

□ 社内に有資格者が何人いるか
建築物石綿含有建材調査者と工作物石綿事前調査者の修了者数を、修了証の写しで総務担当が一覧化しておきましょう。不足する場合は外部委託先も決めておくと、受注時に慌てません。

□ 直近の解体・改修工事で報告が漏れていないか
工事台帳から、80㎡以上の解体・100万円以上の改修工事を抽出し、報告システムの受付記録と突き合わせます。工事担当者任せにせず、管理部門で確認する仕組みがあると安心です。

□ 調査記録を3年間保存できているか
調査記録、発注者への説明書面の写し、現場掲示の写真をセットで保存しているか確認しましょう。紙と電子のどちらで保存するか、保管場所と責任者も決めておくことが大切です。

よくある質問

Q. 下請として改修工事に入る場合も報告が必要ですか?

A. 報告義務を負うのは元請業者または自主施工者とされています。ただし、下請も事前調査の結果を確認したうえで作業する必要があるため、元請から調査結果の写しを受け取り、現場の掲示内容と一致しているかを確認しておくことが望ましいといえます。

Q. 令和7年に契約し、令和8年1月以降に着工した工作物の工事はどうなりますか?

A. 自治体のFAQでは、契約時期にかかわらず、着工が令和8年1月1日以降であれば有資格者による事前調査が必要と整理されています。基準は着工日である点に注意が必要です。

Q. 調査記録の保存期間はいつから数えますか?

A. 労働局の資料では石綿則に基づき「調査終了日から3年間」、名古屋市の案内では大気汚染防止法に基づき「解体等工事終了日から3年間」とされています。起算点が異なるため、実務上は遅い方(工事終了日)を基準に管理すると漏れを防ぎやすくなります。

Q. 石綿が見つからなかった場合も報告は必要ですか?

A. 必要です。報告対象工事に該当する場合、石綿の有無にかかわらず調査結果を報告することとされています。「なし」という結果も報告の対象です。

まとめ

石綿事前調査は、解体・改修工事のすべてで必要とされ、建築物は令和5年10月、工作物は令和8年1月から有資格者による調査が求められています。報告の要否、資格の種類、記録の保存という3つの観点で、自社の体制を一度点検してみてはいかがでしょうか。現場のリスク全体の整理については、法人リスクマネジメントのページもご参照ください。

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出典

本記事は建設業に関わる一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険会社または保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。制度・法令の内容は掲載時点のものです。実際の適用は個別の事情により異なりますので、詳細は所管官庁または専門家にご確認ください。当社の勧誘方針はこちらをご覧ください。

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