はじめに
現時点で公表されている情報では、令和8年9月8日の大雨により名古屋市に災害救助法が適用され、翌9日から市内中小企業向けの特別相談窓口が設置されています。愛知県も資金繰り支援と相談窓口を案内しています。この記事を読むと、被災した建設会社が今どの窓口を使えるのか、申請までにどの書類をそろえる必要があるのかが分かります。
何が起きたのか
報道および気象庁の観測によると、9月8日、台風第24号から変わった熱帯低気圧の影響で愛知県と岐阜県に線状降水帯が発生しました。名古屋(名古屋地方気象台)では16時53分までの1時間に104.5ミリを観測し、1890年の統計開始以来もっとも多い記録となりました。これまでの1位は2000年9月11日の東海豪雨における97.0ミリです。岐阜県多治見市でも16時40分までの1時間に93.0ミリを観測しています。庄内川水系の矢田川では18時18分に氾濫の発生を知らせる警戒レベル5相当の情報が発表され、名古屋市は60万7,879世帯・117万2,102人に緊急安全確保を発令しました。名古屋市の集計では、住宅の被害は9月14日15時時点で286棟、うち床上浸水が142棟とされています。
【用語解説】災害救助法・罹災証明書・被災証明書とは
災害救助法とは、一定規模以上の災害が発生した市町村を対象に、国と都道府県が避難所の設置や住宅の応急修理などの救助を行う根拠となる法律のことです。適用された地域は、事業者向けの金融支援の対象地域にもなります。罹災証明書とは、市町村が住家の被害の程度(全壊・半壊・床上浸水など)を調査して証明する書類のことです。被災証明書とは、住家以外の建物・設備・車両などが被害を受けたという事実を証明する書類のことです。資材置場や重機といった事業用資産は被災証明書の対象になることが多く、どちらが必要かは申請する制度によって異なります。
関連する法令・制度
公表されている支援策を整理します。愛知県の「経済環境適応資金 災害対応資金」は、市町村から被災証明等を受けている中小企業者が対象で、限度額は短期が8,000万円、長期が2億8,000万円です。利率は短期(1年以内)が年1.4%、長期は期間に応じて年1.7%から年2.0%とされていますが、2026年10月1日の申込分からはそれぞれ年1.7%、年2.0%から年2.3%に変わると案内されています。被災証明書等に記載された災害発生日から半年以内に愛知県信用保証協会が申込みを受け付けることが条件です。名古屋市は9月9日から経済局中小企業振興課や名古屋市信用保証協会などに特別相談窓口を設置し、「経営安定資金(災害復旧資金)」を実施しています。さらに、災害救助法の適用を受けた名古屋市について、セーフティネット保証4号の指定が予定されていると愛知県が公表しています。
中小建設会社への影響
建設会社にとっての論点は3つあります。第一に、資材置場や車庫が浸水した場合、被害を受けるのは建物だけではありません。重機・工具・資材・車両といった事業用資産が対象となり、片づけてしまう前に記録を残せているかがその後の手続きを左右します。第二に、現場が止まった影響です。工期の遅れ、協力会社への支払い、入金の遅れが重なると、被害額そのものより資金繰りのほうが先に苦しくなります。建設業の倒産が上半期で過去最多水準という環境下では、手元資金の厚みがそのまま耐久力になります。第三に、従業員や一人親方が自宅で被災している可能性です。名古屋市は住宅に被害を受けた世帯への災害見舞金も案内しており、社内で情報を共有する価値があります。被災後の資金繰りの立て直しについては経営コンサルティング業務でも扱っています。
経営者が確認したい3つのポイント
□ 片づける前に、被害の記録を残せているかを確認する
名古屋市は、被災した建物を片づけ・修繕・取り壊しする前に写真を撮っておくよう案内しています。浸水の高さが分かる引きの写真と、重機・工具・車両を1点ずつ写した写真を、日付が記録される形で撮ります。すでに片づけた場合も、処分前の写真や廃棄伝票が残っていないかを現場代理人に確認します。
□ 被災証明書と罹災証明書のどちらが必要かを窓口で確認する
制度ごとに求められる書類が異なります。愛知県の災害対応資金は市町村が発行する被災証明等、中小機構の小規模企業共済 災害時貸付けは商工会議所等が証明する被災証明願または市町村の罹災証明書とされています。取りに行く前に、使う制度を決めてから窓口に確認します。
□ 申込期限と利率が変わる時期を逆算する
愛知県の災害対応資金は災害発生日から半年以内の受付で、利率は2026年10月1日の申込分から変わると案内されています。中小機構の災害時貸付けも取扱期間は災害発生の日から6か月以内です。経理担当者と一緒に、社内の決裁日程を含めてカレンダーに落とし込みます。
よくある質問
Q. 事務所は無事でしたが、資材置場の重機が水没しました。支援の対象になりますか。
A. 制度ごとに対象が異なります。愛知県の災害対応資金は「自然災害等により被害を受け、市町村から被災証明等を受けている中小企業者」が対象とされており、事業用資産の被害も相談の対象になります。まずは所在地の市町村窓口と、愛知県信用保証協会の災害等専用窓口(0120-454-131、平日9時から17時)にご確認ください。
Q. 保険や共済で対応できるかどうかは、どう確認すればよいですか。
A. 対応できる範囲は契約内容によって異なり、免責事由や制限条件が定められています。ご契約先の重要事項説明書や約款で内容を確認したうえで、担当の代理店や窓口に個別にお問い合わせください。撮影した被害の記録は、こうした手続きで求められることがあります。保険の一般的な考え方はよくある質問もご覧ください。
Q. 名古屋市以外で被災した場合も相談窓口はありますか。
A. 愛知県は県内約100か所に「愛知県中小・小規模企業総合相談窓口」を設置し、大雨の影響を受けた中小・小規模企業者からの相談に対応していると公表しています。県機関のほか、あいち産業振興機構、愛知県信用保証協会、愛知県中小企業団体中央会、各商工会議所・商工会などが窓口とされています。
まとめ
発災から1週間が経ち、片づけが進む時期です。写真と書類が手元に残っているか、使える窓口と期限を把握できているか、確認してみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい
出典
- 愛知県「【知事会見】令和8年9月8日大雨の影響を受けた県内の中小・小規模企業者向け資金繰り支援及び相談窓口について」(2026年9月11日更新)
- 名古屋市「令和8年9月8日の大雨に伴う災害に関する市内中小企業向け特別相談窓口の設置について」(2026年9月14日更新)
- 名古屋市「令和8年9月8日の大雨で被災された方への支援について」
- 中小企業基盤整備機構「令和8年台風第24号及び前線による大雨に伴う災害に係る災害救助法の適用について」(2026年9月10日)
- 防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門「2026年9月8日の東海地方での大雨」
本記事は建設業に関わる一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険会社または保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。制度・法令の内容は掲載時点のものです。支援制度の対象・要件・期限は変更されることがありますので、各実施機関の最新の公表資料をご確認ください。当社の勧誘方針はこちらをご覧ください。
