経審のW点(社会性等)とは
経審のW点とは、経営事項審査において「その他の審査項目(社会性等)」として評価される点数のことです。担い手の育成・確保、営業継続、防災活動への貢献、法令遵守、経理、研究開発、建設機械の保有、規格認証という8つの区分を数値化したもので、総合評定値(P点)の算式のうち0.15のウェイトを占めます。完成工事高や技術職員数と違い、W点は制度への加入や社内体制の整備といった「今から手を打てる項目」で構成されています。規模の大きくない会社ほど、W点は現実的にP点を動かせる部分になります。
なぜ重要なのか
P点は「P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W」で算出されます(愛知県「経営事項審査制度について」)。X1(完成工事高)やZ(技術力)は一朝一夕には伸びません。一方でW点は、建退共への加入、防災協定の締結、経理体制の整備といった手続きの積み重ねで積み上がります。
逆に、W点は減点も受ける項目です。建設業法第28条により指示処分や営業停止処分を受けた場合はW4(法令遵守の状況)で最大▲30点、民事再生法・会社更生法の適用があればW2で▲60点となります。処分歴がP点に跳ね返り、入札参加資格の格付けに影響する構造です。書類の作り方ひとつが後々の受注機会に響く点は、経営事項審査の虚偽記載で指名停止が相次いだ事例でも指摘されているとおりです。
対象となる範囲・条件
経営事項審査は、建設業法第27条の23に基づき、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査です。愛知県の解説によれば、請負代金の額が建築一式工事で1,500万円未満、その他の工事で500万円未満の工事などは対象から除かれます。審査基準日は、申請日の直前の事業年度終了の日(直前の決算日)です。
結果通知書は、審査基準日から起算して1年7か月後の日までの間、公共工事の受注について有効とされています。通知日ではなく審査基準日が起点になる点は誤解の多いところです。
W点の水準は、令和8年7月1日以降の申請について最高2,073点・最低▲788点と国土交通省の資料に示されています。W1〜W8の素点合計は最高237点・最低▲90点で、これを一定の係数で換算したものがW点です。手数料は、経営規模等評価申請が8,100円+審査対象業種1種類につき2,300円、総合評定値請求が400円+1業種につき200円とされています。
手続き・実務の流れ
流れは、①決算確定 → ②決算変更届の提出 → ③登録経営状況分析機関へ経営状況分析を申請 → ④許可行政庁へ経営規模等評価申請・総合評定値請求 → ⑤結果通知書の受領、という順序です。W点の資料は④で提出します。令和8年7月1日施行の改正(令和8年国土交通省告示第262号/令和8年2月6日公布)後の配点は次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 最高/最低 |
|---|---|---|
| W1 | 担い手の育成及び確保に関する取組の状況 | 77/0 |
| W2 | 建設業の営業継続の状況(営業年数・民事再生等) | 60/▲60 |
| W3 | 防災活動への貢献の状況(防災協定の締結) | 20/0 |
| W4 | 法令遵守の状況(指示処分・営業停止処分) | 0/▲30 |
| W5 | 建設業の経理の状況(監査の受審20・公認会計士等10) | 30/0 |
| W6 | 研究開発の状況 | 25/0 |
| W7 | 建設機械の保有状況 | 15/0 |
| W8 | 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証・登録 | 10/0 |
W1の内訳は、建退共の加入15点、退職一時金もしくは企業年金制度の導入15点、法定外労働災害補償制度の加入15点、若年の技術者・技能労働者の育成2点、知識・技術・技能の向上に関する取組10点、ワーク・ライフ・バランスに関する取組5点、就業履歴を蓄積するために必要な措置(CCUS)10点、自主宣言制度の宣言5点です。これらは審査基準日時点の加入・導入の有無で判定されます。
令和8年7月1日施行の改正で変わった3点
第一に、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無が新設され、5点の加点対象となりました。審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていることが要件です。同制度は令和7年12月12日から申請受付が始まっており、愛称は「職人いきいき宣言」です。あわせてCCUSの就業履歴蓄積措置の配点が見直され、民間工事を含む全工事で15点→10点、全公共工事で10点→5点となりました。
第二に、W7の加点対象機械に「不整地運搬車」と「アスファルト・フィニッシャ」が追加されました。令和6年能登半島地震での活用実績を踏まえた見直しと説明されています。台数に応じて最大15点(14台以上)で、審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められたリース契約による機械も対象です。
第三に、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況に関する審査項目(各▲40点)が削除されました。令和2年10月1日以降の許可要件に社会保険加入が追加され、更新期間が5年であることから、令和7年10月1日以降に許可を保有する事業者は当然に加入している、という整理によるものです。改正建設業法の実務対応全般はこちらの記事で整理しています。
よくある誤解
「社会保険の項目がなくなったので、加入状況はもう関係ない」と思われがちですが、実際は逆です。社会保険加入は建設業許可そのものの要件であり、未加入であれば経審以前に許可の維持が問題になります。経審から消えたのは、許可要件として担保されるようになったからにすぎません。
「W点は加点だけの項目」と思われがちですが、実際は減点もあります。W2の民事再生法・会社更生法の適用(▲60点)とW4の法令遵守(▲30点)は、いずれもマイナス評価の項目です。
「結果通知書が届いた日から1年7か月使える」と思われがちですが、起点は審査基準日(決算日)です。決算から申請までに時間をかけるほど、実際に使える期間は短くなります。
経営者が確認したい3つのポイント
□ 直近の結果通知書で、W点の内訳を項目別に確認する
「その他の審査項目(社会性等)」欄をW1〜W8の区分ごとに見て、0点の項目を経理担当者と洗い出します。0点の項目こそ、次回に向けて手を打てる部分です。
□ 次回の審査基準日から逆算して、加入・宣言の期限を決める
建退共や自主宣言制度は審査基準日時点で加入・宣言済みであることが前提です。決算日から逆算した手続き期限を社内で共有します。
□ 結果通知書の有効期限が切れる日を把握する
審査基準日から1年7か月後の日を確認し、公共工事の契約予定と突き合わせます。切れ目が生じそうなら申請時期の前倒しを検討します。
よくある質問
Q. W点だけを上げれば入札に有利になりますか
A. W点のP点に対するウェイトは0.15です。W点の改善はP点を押し上げる要素の一つですが、格付けや入札参加資格は発注機関ごとの主観的事項も含めて決まります。取り組みやすい部分ではあるものの、それだけで結果が決まるものではありません。
Q. 自主宣言制度の宣言はいつまでに行えばよいですか
A. 加点の要件は、審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていることとされています。したがって、次回の審査基準日(決算日)より前に宣言を済ませておく必要があります。申請は国土交通省のポータルサイトから行います。
Q. 建設機械はリースでも加点対象になりますか
A. 告示上、自ら所有する機械のほか、審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められたリース契約により使用する建設機械も対象とされています。短期のスポットリースは要件を満たさないため、契約期間の記載を確認してください。
Q. 公共工事を受注する予定がなくても経審は必要ですか
A. 経営事項審査は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者に義務づけられた審査です。民間工事のみ、あるいは下請としてのみ施工する場合は必須ではありませんが、元請への転換を視野に入れるなら早めの準備が現実的です。
まとめ
W点は社会性等を評価する項目で、P点に0.15のウェイトで反映されます。令和8年7月1日施行の改正で、自主宣言制度の宣言が5点として新設され、建設機械の対象が拡大し、社会保険に関する審査項目が削除されました。結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月です。次回の決算日を起点に、自社のW点で0点のままの項目がないか確認してみてはいかがでしょうか。法人リスクマネジメントの観点からも、処分歴や体制整備は事業の継続性に直結する論点です。
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出典
- 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年2月6日公布)」(令和8年7月1日施行)
- 国土交通省告示第262号「建設業法第二十七条の二十三第三項の経営事項審査の項目及び基準を定める件等の一部を改正する告示」(令和8年2月6日)
- 国土交通省「経営事項審査及び総合評定値の請求について」
- 愛知県「経営事項審査制度について」(2022年12月1日更新)
- 国土交通省「『建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度』が始まります!」(令和7年12月3日)
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